糖尿病網膜症とは
- 糖尿病の合併症についての解説動画は
こちら - この動画の再生時間は、2分15秒です。
糖尿病網膜症はこんな病気です
- 糖尿病により網膜が障害を受けることで、視力が低下する病気です。
- 糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症の1つです。
- 失明のおそれがある病気で、中途失明原因の上位に入ります。
- 定期的に検査を受け、適切な時期に治療を受けることが大切です。
- 治療方法は薬物療法、レーザー抗凝固術、硝子体手術があります。
糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で網膜が障害を受けることで、視力が低下する病気です。
糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経症と並び、糖尿病の三大合併症といわれています。
血糖コントロールができていなかったり、糖尿病発症より数年〜10年になると、糖尿病網膜症を発症する確率が高くなります。
日本人の中途失明原因では、常に上位に入る病気ですが、適切な血糖コントロールと定期的な検査、また早期に治療を行うことで進行を抑えることができます。
糖尿病網膜症は、初期の段階では自覚症状がないことが多いため、糖尿病の患者さんは定期的に眼科の検査も受けるようにしてください。
原因
糖尿病網膜症は、糖尿病が原因で網膜が障害を受けることで、起こります。
網膜は、カメラでいうところのフイルムと同じで、眼の中に入ってきた光を受け取って、脳につながる視神経に伝達する働きをしています。
網膜には、光や色を感じる神経細胞や眼に酸素や栄養を届けたりする細い血管が無数に張り巡らされています。
糖尿病で血糖値が高い状態がつづくと、網膜内の血管もダメージを受けます。血管が変形したり、つまったりすることで、網膜の細部に酸素が行き渡らなくなり、酸欠状態に陥ります。悪化すると、異常な血管が増殖し(新生血管)、酸素不足を補おうとしますが、新生血管はもろいため出血を起こしたり、網膜剥離や緑内障を引き起こします。
網膜の血管の様子
症状
糖尿病網膜症は、初期の段階では、ほとんど自覚症状はありません。以下のように進行します。
- 初期: 単純網膜症
- 自覚症状はありません。
血管の状態を確認すると、毛細血管の一部が瘤のように腫れていたり、小さな出血が見られたりします。 - 中期: 前増殖網膜症
- 視界がかすむなどの症状が見られます。
血管の状態を確認すると、網膜の細い血管の詰まりが見られます。 - 末期: 増殖網膜症
- 視力低下や飛蚊症が起こり、失明に至る場合があります。
異常な血管(新生血管)や膜(増殖膜)が増殖し、新生血管から出血が起きたり、網膜が増殖膜に引っ張られる形で網膜剥離が起こったりします。
飛蚊症の見え方
糖尿病網膜症の治療
糖尿病網膜症の治療の基本は、糖尿病の治療と同様、血糖コントロールです。
網膜の状態に応じて、お薬による治療、レーザー光線によるレーザー光凝固術(網膜光凝固術)、硝子体手術などを行います。
また、糖尿病網膜症は早期に適切な治療ができるよう、定期的に眼科の検査を受けることが大切です。糖尿病治療中の患者さんはお気軽にご相談ください。
レーザー光凝固術
(網膜光凝固術)
網膜にレーザーを照射する治療方法です。
レーザーを照射して、網膜内に異常に発生した新生血管を減らしたり、出血等の治療を行います。また、新生血管の発生を予防することも目的の1つです。
進行具合により、レーザーの照射回数や照射の範囲は異なります。
【治療の流れ】
- 点眼薬で瞳孔を開かせます。
- 専用のコンタクトレンズを装用し、病変部にレーザーを照射します。
- 治療後の眼底の状態を確認し、帰宅となります。
注意点
- レーザー光凝固術で視力が回復するわけではありません。網膜症の進行を阻止するための治療方法です。
- 網膜を熱で焼くため視力が低下することがあります。治療をしないよりは、視力低下の程度は低いといわれています。
- レーザー光凝固術についての解説動画はこちら
- この動画の再生時間は、2分29秒です。
硝子体手術
レーザー治療で進行を防げなかった時や網膜剥離、硝子体出血が起こった時に行われるのが、硝子体手術です。眼球に2つまたは3つの小さな穴を開けて、専用の器具を挿入し、濁った硝子体を切除します。
【治療の流れ】
- 眼球に小さな穴を2~3ヶ所開けます。
- 硝子体を切除して透明な液体に置き換えます。
- 網膜の処置を行います。
- 透明な水や気体、オイルに置き換えます。
注意点
- 硝子体手術は、網膜症の悪化を防ぐことが目的です。視力回復は網膜障害の程度によります。
- 日帰り手術が可能ですが、状態によっては入院が必要な場合があります。
- 硝子体手術についての解説動画はこちら
- この動画の再生時間は、2分50秒です。
(注)当院では硝子体手術はおこなっておりません。手術が必要な方は手術可能な他施設を紹介しています。